腸活エキスパート薬剤師の
ミッチー(@GooodGut)です。
「がんでは死なないがん患者」
の著者、東口高志先生によれば、
がんで入院した人のうち
がんが直接の原因で亡くなる人は
2割に過ぎないという。
がん末期の入院患者の死因の8割は
いわゆる”むせ”による誤嚥性肺炎や
血液にばい菌がはいったことによる敗血症、
院内感染などの感染症が原因だそうだ。
がんの末期の患者といえば
栄養状態が良くないことが多い。
そもそもカラダが衰弱していれば
感染症のリスクが高まるのは理解できる。
では、点滴で強制的に栄養を入れれば
感染症が防げるか?というとそうではない。
東口先生の研究では
口から栄養摂取と点滴栄養に比べると
MRSA*の発生率が
21.1%→6.5%
カテーテル敗血症の発生率は
10.2%→0%
平均在院日数は
20.9日→16.7日に短縮したという。
抗生物質が効かない感染症に
ここまでの効果があるのは正直驚きだ。
*MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
院内感染で代表的な菌。
健常人には害はないが、
抵抗力が落ちた人がかかると重症化しやすい。
抗生物質が効きにくい難治性の感染症。
なぜ「食べる」ことが
これほどまでに免疫力を上げるのか?
ひとつは食べ物が腸を経由することで
消化管ホルモンが発動し代謝が上がるためだ。
また食べることで腸内細菌にもエサが届き、
彼らが免疫力を調整してくれる。
しかし、最も重要な理由は
小腸の栄養源にある。
小腸自身はどこから栄養を
供給されているかご存知だろうか?
もちろん、血液から?
いいえ、
実は小腸自身は
腸を通過する食べ物から
直接栄養を得ている。
だから血管から栄養を入れても
小腸を養うことはできない。
通常、小腸上皮細胞は
2~3日毎に新しく作り替えられ
カラダの中では最も新陳代謝が活発な場所だ。
その分、エネルギー消費も激しい。
小腸の内側は
食べ物から栄養を効率よく吸収するために
絨毛(じゅうもう)と呼ばれるヒダで覆われている。
小腸に食べ物が通過しないと
小腸自身に栄養が届かないため、
この絨毛も萎縮して次第に短くなり、
やがて剥がれ落ちてしまう。
この萎縮は数日間の絶食でも起こることが
動物実験で明らかになっている。
例えば
ファスティング明けで
食事をした時、
今まで見たことがないような
便がでてスッキリした!!
これが宿便かも?
という話を聞くことがあるが、
それは小腸絨毛が
剥がれ落ちた結果かもしれない。
ガン末期の患者では
本来、腸にいるべき腸内細菌が
脳で見つかることがある。
これは腸が水漏れを起こし、
腸内細菌が血流に乗って
脳まで達したと考えられている。
医療業界ではこれを
バクテリアルトランスロケーション
と呼ぶ。
一般的には
リーキーガット(漏れ腸)症候群
の方がよく知られているかもしれない。
腸漏れが起こると
腸内細菌だけでなく、
腸内にあった様々な老廃物や毒素が
カラダ中にばらまかれるため、
全身感染症の引き金になると考えられている。
ガン末期で体力の低下した患者が
こういった事態になるのを防ぐには
抗生物質よりも
術前術後の栄養がカギになる。
特に絶食期間をできる限り
短くすることがポイントで、
東口先生は基本的に
手術前4時間と術後12時間の
計16時間以上は絶食させない
ようにしているという。
その成果は上述の通りだ。
この本を読んで
食べることは生きること
だと改めて感じた。